リーマンショックという大嵐に直撃し、身も心もボロボロになって株式市場から強制退場させられた私。
しばらくの間は、傷口に塩を塗るような投資のニュースからは徹底的に距離を置き、ただ嵐が過ぎ去るのを待つだけの死んだような日々を送っていました。
しかし、人間とは悲しいかな、喉元を過ぎれば熱さを忘れる生き物です。数年の月日が流れ、傷が癒えるにつれて、私の頭の中にふつふつと「あの愚かな野心」が再び湧き上がってきました。
「……もう一回だけ、やってみようかな」
これが、私の「再起(という名の第2ラウンド)」の始まりでした。
1. 2010年、第二章のゴングと「あの日」の衝撃
2010年ごろ、私は恐る恐る再び市場に足を踏み入れました。 前回の反省を活かして(いるつもりで)、今回も個別株を中心に少しずつ、恐る恐る買い進めていきました。
幸いにも相場は味方してくれ、持ち株は順調に含み益を増やしていきます。 「おいおい、もしかしてオレ、投資の才能あるんじゃない?」 なんて調子に乗っていた矢先、あの「まさか」が再び襲いかかります。
2011年3月11日。東日本大震災。
市場は一瞬にして大混乱に陥り、私の保有していた個別株たちも、奈落の底へ向かって真っ逆さまに急降下していきました。下落幅そのものは、あの地獄のリーマンショックに比べればマシだったかもしれません。それでも、古傷を容赦なくえぐられるような恐怖が全身を駆け巡りました。
2. 「ホールド」ではない。ただの「気絶」である
この時、パニック寸前の私の脳裏をよぎったのは、猛烈な「悔しさ」でした。 リーマンショックのとき、恐怖に耐えかねて底値で投げ売りし、その後に市場がケロッと回復していくのをただ指をくわえて見ていた、あの惨めな記憶です。
「あのとき、売らなければ……!」
そのド根性(というか未練)があったからこそ、私は踏みとどまりました。 とはいえ、高尚な投資理論に基づいた「長期ホールド」を決意したわけでは全くありません。ショックのあまり思考が完全に停止し、「現実逃避のために、気絶したふりをして証券口座を放置した」というのが、情けないかな本音です。
パスワードすら忘れようとするレベルで、徹底的に現実から目を背け、文字通り「気絶」すること約半年から1年。
恐る恐る薄目を開けて口座を確認してみると……なんと、株価はいつの間にか元の水準へと戻っていました。 「生きてる……! 気絶していたおかげで、私は一命を取り留めたんだ!」
3. 「気絶」から「確信」へ。繰り返される〇〇ショック
正直に言えば、この震災の時点では「株価はいつか必ず戻る」というロジカルな確信や知識なんて、これっぽっちもありませんでした。ただ「パニックで動けなかっただけ」のラッキーパンチです。
しかし、この「生き残った」という成功体験が、私の投資脳をバグらせ……いや、タフに鍛え上げていきました。
その後も、世界経済は定期的に私を脅しにやってきます。
- 2015年:チャイナショック
- 2016年:ブレグジット(英国のEU離脱ショック)
急落する相場。しかし、以前の私とは違いました。暴落が来るたびに、あの震災時の「気絶成功体験」がフラッシュバックするのです。
「フッ、またいつものやつが来たな。ここで慌てて売らなきゃ、どうせまた戻るんだろ?」
何度も相場にボコボコにされ、その都度ゾンビのように蘇る市場を特等席で見届けたことで、私の中にあった「ただの恐怖」は、徐々に「株価は戻るという確信」へとアップデートされていきました。教科書の「長期投資のすすめ」を読んでもビビり散らかしていた私が、泥臭い経験によって、ようやく「暴落への耐性」を手に入れたのです。
4. 本質は何も変わっていなかった「お小遣い稼ぎ無限ループ」
「よし、これで私も一流の投資家へ一歩近づいたぞ!」
……と、ドヤ顔を決めたいところですが、ここで私の前に「最大のオチ」が待ち受けていました。 暴落への耐性はついたものの、私の投資の「本質(脳内スペック)」は、驚くほど何も変わっていなかったのです。
当時の私のスタンスは、将来を見据えた「資産運用」とは程遠い、ただの「お小遣い稼ぎ」でした。
個別株を買い、値上がりして利益が出たら嬉々として売却。 そして、その利益で「ご褒美」と称して美味いものを食べ、欲しいものを買い、綺麗さっぱり使い果たす。 で、手元に残った原資でまた個別株を買い、ハラハラしながら利益を待つ……。
「増えたら使う、使ったらまた稼ぐ」
このお小遣い稼ぎの無限ループを繰り返していたため、いくら相場の波を乗りこなせるようになっても、手元の資産はミリ単位でも増えやしませんでした。やってることは、ただの「ちょっとスリルのある日雇い労働」です。
5. 情報なき時代の「自転車操業」
まぁ、言い訳をさせてもらえるなら、当時は今と違って「情報の暗黒時代」でした。
今やYouTubeを開けば、優秀な投資インフルエンサーたちが、 「インデックス投資こそが至高!」 「複利の効果を最大化するために、配当や利益は絶対に再投資せよ!」 と、親切丁寧に(時には耳が痛いほど)教えてくれます。
しかし、当時はそんな便利な動画もなければ、猫も杓子も「個別株で一発当てる」のが主流だった時代。 「インデックスファンドをバイ&ホールドして、分配金を自動再投資して資産を雪だるま式に増やす」なんていう、現代的で美しく、かつ合理的な資産形成の概念は、当時の私の世界線には存在していませんでした。
「耐性」はついた。けれど、「資産を増やす仕組み」は空っぽ。
リーマンで退場し、震災で気絶し、幾多のショックを乗り越えて「ゾンビ投資家」として生き残った私ですが、このお小遣い稼ぎの自転車操業から抜け出し、真の「資産運用」へとシフトするまでには、ここからさらにもう少し、時間がかかることになるのです。
(つづく)


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