はじめに:なぜ、お金持ちはさらにお金持ちになっていくのか?
「利益が出たら売る」を繰り返していた10年間
投資を始めた頃の私は、「なぜ、お金持ちはさらにお金持ちになっていくのか?」なんて深く考えたこともありませんでした。
株を買って、値上がりしたら売る。利益が出れば「儲かった」と喜ぶ。当時はそれが投資のすべてだと思っていました。
気づけば投資を始めてから22年の月日が流れています。その間にはリーマンショックのような歴史的大暴落も経験しましたし、少し利益が出たらすぐに売却していた時期もありました。
10年以上経ってから出会った「R>G」という言葉
そんな試行錯誤の投資生活の中で、10年以上経ってから出会った言葉があります。
それが「R>G」です。
初めて耳にしたときは「なんだか難しい経済学の理論だな」程度にしか思っていませんでした。しかし、失敗を乗り越えながら長期投資を続け、資産が少しずつ大きくなっていくにつれて、その意味が「自分の資産の数字」を通してクリアに理解できるようになりました。
今では、「なるほど。これがR>Gということなのか」と強烈に実感しています。
R>Gの本当の意味と個人の資産形成
「R>G」とは?(資本収益率と経済成長率)
R>Gは、フランスの経済学者トマ・ピケティ氏が著書『21世紀の資本』で示した考え方です。
- R=資本収益率(Return on capital)
- G=経済成長率(Growth)
厳密にはマクロ経済の広い概念ですが、個人の資産形成に置き換えて考えると、Rを「資産が生み出す収益率」、Gを「所得や経済が成長するスピード」とイメージすると分かりやすいでしょう。
給料の伸びと資産の増え方を例で考える
例えば、会社員の給料で考えてみましょう。年収500万円の人がいて、毎年2%ずつ給与が増えるとします。
- 給与(Gのイメージ):500万円 ➔ 510万円 ➔ 520万2,000円……
一方、1,000万円を株式などの資産に投資していて、長期的に年平均5%のリターンが得られたとします。
- 資産(Rのイメージ):1,000万円 ➔ 1,050万円 ➔ 1,102万5,000円……
もちろん、株式投資は毎年均等に5%ずつ増えるわけではありません。10%、20%と上昇する年もあれば、大きく下落する年もあります。ここではあくまで「所得の成長率と資産の収益率の違い」をイメージするための例です。
働いて得る所得だけに頼らない仕組みの重要性
給料が年2%ずつ増える一方で、資産が長期的に5%程度の収益を生み出すと考えると、資本を持つ側ほど資産が増えるスピードが速くなっていきます。
長期的な資産形成を考えると、「働いて得る所得」だけで資産を増やすよりも、資本そのものが収益を生み、その収益がさらに次の収益を生む仕組みを持つことが、大きな意味を持ってきます。
資産規模が大きくなるほど実感する「お金がお金を生む」力
元本の大きさによって生まれる収益の違い
この仕組みでさらに重要なのが、「元本の大きさ」です。
同じ年利5%で運用できたとしても、元本の規模によって生み出される金額は大きく異なります。
- 100万円 × 5% = 5万円
- 1,000万円 × 5% = 50万円
- 3,000万円 × 5% = 150万円
- 5,000万円 × 5% = 250万円
投資の初期段階では、「自分が入金して増やしている」という感覚が圧倒的に強いはずです。
評価益が「本業の月給」を上回る瞬間
しかし、資産が1,000万円、3,000万円、5,000万円……と大きくなってくると、少しずつ感覚が変わってきます。「自分が入金して増やしている」だけでなく、「資産そのものが大きなお金を生み出している」と感じるようになるのです。
相場が良い月には、投資による1ヶ月の含み益が、自分の給料を上回ってしまうことすら珍しくありません。
もちろん、これは毎月利益が出るという意味ではなく、株式市場には大きな下落もあります。ですが、長期の視点で見れば「資産が第二の働き手として機能している」ことを、数字で実感できるようになります。
投資歴22年の私が遠回りして気づいたこと
安易な「利確」が成長の機会を奪う罠
ここで少し、私自身の失敗談をお話しさせてください。私が「R>G」の本質を知るまでに10年以上かかった最大の理由は、「利益が出たらすぐ売る」という投資をしていたからです。
株を買い、値上がりし、利益が出たら「儲かった」と思って売る。当時はそれで満足していました。
利確すること自体が悪いわけではありません。しかし、単純に「利益が出たから」という理由だけで売っていた過去を振り返ると、非常にもったいないことをしていたと感じます。
利益を確定した時点で、その資産が将来生み出すはずだった値上がり益や配当を得る機会はなくなります。持ち続けて再投資していれば、次の利益を生み出す大きな元本になっていたはずでした。
バフェットの「雪だるま」と複利の本質
長期投資について語るとき、ウォーレン・バフェット氏の「雪だるま」のたとえがよく使われます。
小さな雪玉を坂道で転がし始める。最初はなかなか大きくありません。しかし、転がし続けることで少しずつ雪が付着し、雪玉が大きくなるにつれて、一回転で巻き込む雪の量が爆発的に増えていきます。
投資もこれと全く同じです。
100万円の5%は5万円ですが、5,000万円の5%は250万円です。長期的に成長する資産を保有し続けることで、資産そのものが次のリターンを生み出す力が大きくなっていきます。
この「雪だるま」が大きくなってくると、「お金がお金を生む」ということを理屈ではなく数字として実感できるようになります。
投資初心者こそ「時間」を味方につけてほしい
資産形成で辿る「3つのフェーズ」
これから投資を始める人、まだ投資歴が浅い人に伝えたいのは、「いくら儲けるか」だけではなく、「何年続けるか」を考えてほしいということです。
資産形成を続けていくと、感覚は次のように変化していきます。
- 初期:「自分が働いたお金を投資している」感覚
- 中期:「自分のお金 + 運用益で資産が増えている」感覚
- 長期:「資産そのものが、自分が働いて得る給料を上回るほどの収益を生むことがある」感覚
最初は100万円が105万円になる程度で、「これだけしか増えないのか」と感じるかもしれません。しかし、そこでやめずに積み上げ、時間をかけることで、雪だるまは確実に大きくなっていきます。
「気づいた今から積み上げればいい」という考え方
投資歴22年。それでも私は今だに「もっと早く長期投資に気づけばよかった」と思います。
最初から良い資産を長く持ち、時間を味方につける考え方を持っていたら、今とは違った資産状況になっていたかもしれません。
筋トレでも「もっと若い頃からやっておけばよかった」と思うことがあります。しかし、過去に戻ることはできません。遠回りをしたからといって、遅すぎるということは絶対にありません。
「もっと早く気づけばよかった。でも、気づいた今から積み上げればいい。」
焦って一発逆転を狙う必要はありません。自分に合ったリスクの範囲で、時間を味方につけて少しずつ積み上げていけばいいのです。
おわりに:22年前の自分へ伝えたいこと
「R>G」という言葉を知ること自体が一番重要なわけではありません。大切なのは、資産を持ち、時間をかけてじっくり育てることです。
自分が働いて得る給料や時間には限界があります。一方で、優良な資産はあなたが寝ている間も働き、成長し続けてくれます。
振り返れば、私の22年間も決して一直線ではありませんでした。遠回りをしたからこそ、時間の大切さを誰よりも強く実感しています。
もし、22年前の自分に一つだけアドバイスできるとしたら、私はこう伝えたいです。
「利益が出たらすぐに売るのではなく、優良な資産を持ち、時間を味方につけろ」
これから投資を始める人も、まだ始めて間もない人も、焦る必要はありません。20年後の自分から見れば、今日という日はまだまだ圧倒的に早いスタート地点なのです。


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